第39話

東條ホールディングスのビルまで?


受付に、副社長に渡してくださいって言って、さっさと帰って来れば大丈夫かな。

私は意を決して東條ホールディングスのビルに向かった。


理樹さんに会いませんように。


受付に行って「あの、副社長の忘れ物です、渡して頂けますでしょうか」と封筒を受付に渡した。


「お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか」


「渡して頂ければわかりますので」


その時「亜紀」と私の名前を呼ぶ声が聞こえた。


理樹さんの声。


振り向くと理樹さんが私に向かって駆け寄ってきた。


しまった、見つかった。


でも、もう、遅い。


私は何を考えたのか、受付に封筒を置いて、走り出した。


「待って、亜紀」


理樹さんは受付の封筒を掴むと、あっという間に私においついた。


そして、私の腕を掴んで、理樹さんの方に向かせられた。


理樹さんは息を切らせて「亜紀、何でここにいるの、健の忘れ物を何で亜紀が届けてるの」と詰め寄った。


どう答えていいか戸惑っていると、私のスマホが鳴った。

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