第29話

今思うと理樹とはこの時からの付き合いだ。


就職活動の時も、てっきり理樹は親父さんの会社を継ぐと思っていたが、僕に驚きの言葉を投げかけた。


「なあ、俺と会社立ち上げないか?」


「はあ?言ってる意味わからないよ」


「なんでだよお、資金は俺が出す、だから俺が社長で、健が副社長な」


「マジで言ってるのか」


「当たり前だろ、俺にないものを健は持ってる、だから俺達最高のバディだと思わないか?」


理樹は、まさかと思っていた事を現実に叶うと思わせた。


あれから五年ガムシャラに突っ走って来た。


僕は当時彼女がいなかった、しかし理樹には愛する女性がいた。


でも、今はこの世にいない。


五年前癌でこの世を去った。


まさか五年後に同じ女性を愛するなんて全く想像がつかなかった。


「私、帰ります、それからこのお話はなかったことにしてください」


「理由を聞かせてくれ」


亜紀は俯いて黙っていた。

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