第13話

ビルを見上げていると、一人の男性が私に声をかけて来た。


「失礼ですが、弊社に何か御用でしょうか」


振り向くと、誠実な印象の素敵な男性だった。


「いきなり、失礼致しました、自分は東條ホールディングス副社長、東條健と申します」


その男性はそう言って、私に名刺を差し出した。


私はその名刺を受け取りまじまじと見つめた。


「あのう、社長秘書の件でしたら、既に決まってしまって」


「いえ、違います」


「そうですか」


副社長ならいろいろな事を知ってるかもしれない。


私は意を決して副社長に尋ねた。


「御社のホームページを拝見して、社長さんのプロフィールの事なんですが、婚約者と記載があったのですが、婚約者がいらっしゃるって事ですか」


副社長は私をまじまじと見つめて、それから答えた。


「はい、取引先のお嬢さんです、失礼ですが社長のお知り合いの方でしょうか」


私は戸惑いを隠せなかった。

「あの、その、えっと、知り合いではありません」


まずい、変に思われたよね。


「そうですか」

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