第12話

「はあ?俺は認めてねえぞ」


「愛理ちゃんはその気なんだから、恥をかかすなよ」


「愛理ちゃん?そんなに仲がいいんならお前が結婚すればいいだろ」


「愛理ちゃんはお前を好きなんだよ、今、愛理ちゃんの親父さんに手を引かれたら、この会社は倒産する」


「嘘だろ?」


「嘘じゃねえよ、この会社を存続させたければ、結婚したい女は諦めるんだな」


俺は亜紀との約束を果たす事が出来なくなった。


それからさらに一ヶ月が過ぎようとしていた。


私は理樹さんを諦めなくちゃと自分に言い聞かせていた。


婚約者がいる社長さんが私にプロポーズするわけがない。


異国の地で一夜のアバンチュールだったんだ。


理樹さんだけ責めることは出来ない。


私だって納得して、一夜を過ごしたんだから。


でも「あの夜の事は遊びだった」と言われたら諦められるかもしれないと思い、私は信じられない行動に出た。


東條ホールディングスのビルを訪ねた。


こんなところまでアポなしで来て、理樹さんに会えるわけがないよ。

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