第5話

しまった、この歳で経験ないなんて、胸張って言う事じゃないよね。


「あのう、今の話、忘れてください」


「忘れない」


もう、何よこの人。


「マジかよ、国宝級だな、何かあるのか?」


「どう言う意味ですか」


「男に相手にされない感じじゃないから」


「この間まで付き合っていた男性がいました、振られましたけど」


「その男とは何もなかったのか?」


私は頷いた。


「どれくらい付き合ったんだ」


「二年です」


「二年間何もなかったのか」


その男性は驚いて大声を上げた。


「だって、結婚するまでは何もないのが当たり前です」


「お前、本気で言ってるのか」


「だから、お前じゃありません」


「亜紀、今時結婚するまでセックスしない男女なんて聞いた事ないぞ、だから振られるんだよ、でもよく二年もその男は我慢したな」


亜紀っていきなり呼び捨て!


しかも、私をぼろくそに言って、なんなの?


「私、帰ります」


「飯、食わねえのか、そろそろルームサービスが運ばれて来るぞ」

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