第48話

あれ以来峻はマンションへは戻って来なかった。

峻、もう私は峻に会えないの?

唯香さんは、峻を取り戻そうと自殺未遂を選んだんだ、峻がいないと生きていけないと証明したんだ、私はどうなんだろうか。


私だって峻がいないと生きていけない、でも、それを証明する勇気は私にはない。


峻の気持ちはきっと唯香さんにある、だって放っておけないんだから・・・


私は毎日泣いていた、峻が私を利用しようとした事がショックだったのに、峻の事信じられないと思ったのに、今では峻がいない毎日がこんなにも寂しいなんて、これほどまでに峻に惹かれている自分の気持ちに、もう嘘はつけない。


ある日マンションの部屋のインターホンが鳴った誰だろうと思い応対すると、秘書の山元さんだった。


「奥様、大丈夫でしょうか、何かお困りの事がありましたらなんなりとお申し付けください」


私はドアを開けて山元さんを招き入れた。


「ありがとうございます、でも大丈夫です」


「社長が大変心配されています、一人放っておいで申し訳ないとおっしゃっていました、それで私に奥様の様子を見てくるように申しつけたのです」


「峻が・・・」


「はい、私では役不足かと思いますが・・・」


「そんなことはありません、一人でいるといろいろな事を考えてしまいますから、とても心強いです」


「社長が奥様に惹かれる気持ちわかります」


「えっ?」


「あっ、いえ、余計な事を言いました、申し訳ありません」


私は山元さんの心遣いに感謝した。


「また、寄らせて頂きます、何かありましたらなんなりと私のスマホに連絡してください」


「あのう、峻はずっと病院ですか?」


「はい、唯香さんの意識が戻りません、睡眠薬を大量に飲み、昏睡状態です」


「そうですか、心配ですね」


「では、失礼致します」


山元さんはマンションを後にした。

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