第34話

雫が俺の元を去った時は、今まで感じたことがない程の感覚に陥った。

ポカンと胸に穴が空いたような、何も手につかなかった。

雫がいないだけで気持ちが沈む。

しかも他の男の元にいるなんて、考えただけでも気が狂いそうになった。


今まで俺には独占欲など無いと思っていた。

だが、雫に対しては誰にも渡したくないと強く感じた。

あいつと一緒と聞いた時には、どうしようもない嫉妬の気持ちが溢れていた。


チビ助も渡したくない、そう、俺はこの世の中に自分の子供を残せない、無精子症だ。

この事を告げると、大抵の女は俺を振る。

俺には妻になる女性と子供が必要だった。


しかし今の雫に対する気持ちは必要ではなく、無条件で雫が欲しい。

雫は一生離さない、誰にも渡さない。



雫以外に好きな女性が現れたら、契約を解除してくださいと雫は言っていたが、それは絶対に無いと断言出来る。

俺は雫を契約ではなく、愛している。

優しい眼差し、可愛らしい笑顔、放って置けない気持ちが次第に愛情へと変わっていった。


こんな気持ちになったのは初めてだ。

他の男に取られないように、俺だけのものにしたい、だから入籍を済ませた。

チビ助の父親になる決心も固まった。

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