第33話

次の日から峻との契約生活が再スタートした。

峻は私に思いもよらぬ事を伝えた。


「雫、入籍しよう」


「えっ?」


急な彼の申し出に心臓の鼓動がドキドキなった。


「チビ助の事もあるし、もうあんな思いはごめんだ」


彼は頭を抱えて下を向いた。


「ごめんなさい」


私が彼を信じられなくて、彼のマンションを飛び出してしまったから。


「雫は悪くない、俺が雫に不安な思いをさせたからな、それにあいつがそこまで雫を思っていたなんて、俺の考えは甘かった」


私の方がびっくりしている、まさか一夜の過ちと思っていたのに、結婚を考えてくれてたなんて。


「なあ、雫、あいつの事は忘れろ、俺が雫とチビ助を守る」


私は彼の言葉が嬉しくて頷いていた、例えそれが契約上の言葉であっても・・・


そして次の日入籍を済ませ私は冴木雫となった。

この幸せがずっと続きますようにと願った。

でも契約上の関係は永遠には続かないと自分に言い聞かせた。

私は彼にお願いを一つした。


「この先、峻に好きな人が出来て、結婚したくなったら、ちゃんと私に伝えてください、その時は契約を解除しますから」


彼はニッコリ微笑んで「わかった」と言った。

その後彼は信じがたい一言を私に向けた。


「俺に雫以外に好きな女性が現れなかったら、ずっと俺の側にいると約束してくれ、いいな」


彼は私を抱き寄せ、優しいキスをした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る