第18話

この時、龍斗は思った。


まどかが一人で生んで育てるので有れば、誰の子供でも構わない、まどかを側に置いて守ろうと決心した。


まどかは親父の代からの秘書で、はじめて出会ったのは、十年前だ。


まどかが二十九歳、俺が二十歳の時。


ちょうど、親父の会社に用があり、ビルの前を通りかかった時、泥棒って女性の声がして、


俺の横をバッグを抱えた男が走り過ぎた。


その男の後方に倒れて「その男を捕まえて」と叫ぶ女性がいた。


俺はその男の足を引っ掛けて倒した。


その男に跨りバッグを奪い返した。


親父のビルの警備員がすぐに駆けつけたので、俺はその男を引き渡した。


女性はハアハア息を切らせて俺に近づいてきた。


「ありがとうございました」


俺はバッグをその女性に手渡した。


「血が出ています」


そう言って女性はハンカチを出して俺の手に巻きつけた。


「大丈夫ですか」


「あっ、大丈夫」

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