第16話

その時、龍斗はまどかを引き寄せ抱きしめた。


「社長?」


「具合が悪いのに、まどかを放っておく奴の気がしれない」


「社長は優しいんですね」


「今ごろ気づいたのか、遅えよ」


「本当ですね、遅いですね」


「いや、遅くねえ、俺のマンションにこい、こんなところに一人でいたら、余計に具合が悪くなる」


社長はまどかの答えを聞く前に、まどかを抱き上げて、車に運んだ。


身の周りの荷物だけ車に積んで、走り出した。


まどかは龍斗に攫ってもらいたかったのかもしれない。


全く抵抗もせず、ただただ嬉しくて、今、龍斗の運転する横顔をじっと見つめていた。


マンションにつくとすぐにベッドに横になるように促された。


「まどか、熱測れ」


「はい」


「薬飲んどけよ」


そう言って龍斗は薬をまどかに手渡した。


まどかは妊娠検査薬で陽性だったので、薬は飲みたくなかった。


「あのう、社長、薬は飲みたくありません」


「何子供みたいなこと言ってるんだ、わがまま言わずにさっさと飲め」

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