第36話

彼の私を好きって気持ちは嘘じゃないかもしれない、でも彼女も好きなのだ、きっと彼女の方が大好きって気づいたに違いない、きっと。

私は指輪を外した、この指輪をするのは私じゃない。

 次の日彼が迎えにきてくれた。

「あゆみ、大丈夫?帰ろうか」

「すみません、ご迷惑かけてしまって」

私は彼を真っすぐ見られなかった。

彼を大好きな気持ちと、彼女に申し訳ない気持ちが入り混じって動揺していた。

「お二人でよく話し合ってください」

「お世話になりました」

彼は先生にお礼を言って、マンションへ向かった。

部屋に入ると彼は、優しく私を抱きしめてくれた。

その時指輪をしていない私に気づいた。

「あゆみ、指輪どうしたの?無くした?」

「あっ、あります」

そしてバッグから指輪を出して彼に渡し。

「この指輪をするのは、私じゃなかったみたいです」

「えっ、どういう事?」

彼は全く分からない様子で私を見つめた。

「あのう、麻生さんとの結婚指輪は彼女がするべきと思います」

「彼女?」

「麻生さんが大好きな女性です」

「俺が大好きな女性はあゆみだけど・・」

「最近もっと大好きって気づいた人です」

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