第34話
彼は黙ったまま私の話を聞いていた。
「この間、具合悪くなった時、心配だから病院へ行きましょうって言ったけど、病院行きたがらなかったし、私、心配で麻生さんの寝顔見に行った事あるのです、その時、苦しそうにまるで魘されているみたいに「あゆみごめん」って、何がごめんなのですか、麻生さんどこかへ行くって事ですか、私は一人になっちゃうの」
もう涙が止まらなかった。
彼は私を抱きしめて落ち着かせようとしてくれた。
「あゆみ、落ち着いて、そんなに一遍に話したら分からないよ」
彼は暫く私を抱きしめたまま、大丈夫、大丈夫って繰り返してくれた。
「まず、沈黙した理由だな、え~っと、全然覚えてない、それから病院行かないのは大丈夫だから、それからあゆみごめんの寝言だよな、え~っと、これも全然覚えてない」
彼は私の不安を覚えてないと大丈夫で終わらせた。
「あゆみ、覚えてない事だから、たいした事ない事だと思うよ」
何も言えなかった、納得したわけじゃないけど、私の考え過ぎならいいと、自分に言い聞かせた。
彼は暫くの間私を抱きしめてくれた、すごく安心した、ずっと彼の傍に居たいって、この時私は強く願った。
つわりが始まり、初めての事ばかりで、毎日が不安だった。
でもいつも彼は私を抱きしめてくれた。
しかし最近気づいた事がある、それは彼が私にキスをしなくなった事である。
どうしてだろう?と気になっていた。
もしかして他に好きな人が出来て、私に対して好きって気持ち薄れてきたのだろうか。
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