第33話

「そうですか、おうちに帰ってからよく相談なさってください」

「相談もなにも、生む方向でお願いします俺、子供欲しいですよね、あゆみとの子供」

「分かりました。次回は二週間後にいらしてください」

「二週間後ですね、分かりました、ありがとうございました」

「それからもう一つ、注意して頂きたい事があります、安定期に入るまで、流産しやすいので、転倒や、精神的ショックなど与えないように気をつけてあげてください、あと、子宮の収縮は流産の原因になりますので夫婦の営みはほどほどにしてくださいね」

 「えっ、暫くお預けですか?」

「そういう訳ではないですが、奥さまの体調や気持ちを大切に考えてあげてください」

「分かりました」

彼が診察室から出てきた。

「あゆみ、今度二週間後に来てだって、会計して帰ろうか」

「はい」

会計を済ませてマンションへ向かった。

 彼はマンションに着くなり、私を優しく抱きしめてくれた。

「あゆみ、俺の子供、いや俺達の子供産んで欲しい、何にも心配しなくて大丈夫だからな」

私は彼に本音をぶつけた。

「麻生さんはいつでも即答で、考える事がないのかなっていつも思っていました。私はいつも考えてばかりで、どうしようって思わない時はないくらいです」

「そうかなあ、そんな事ないと思うけど」

彼は、私がこれからなんの話をするのだろうと不安そうな表情を見せた。

「でも二回だけ、答えに詰まり沈黙になった事がありました」

彼は考えていた、思い当たる事が無いのだろうか、首を傾げる態度をしていた。

「今どうしようって話は、麻生さんすぐ答えを出しますけど、子供の将来とか、私達の未来とか、何年も先の話は沈黙状態になり、答え聞いた事無いです」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る