第25話

「あゆみ、大丈夫だよ、ホテルの部屋借りて、少し休もうか」

私は大きく頷き、彼と手を繋ぎ、エレベーターに乗った。フロントへ行き部屋の鍵を受け取り、スイートルームへ向かった。

部屋に入ると彼はすぐに私を抱きしめてくれた。涙が止まらない。頬に伝わった涙を拭うように優しくキスをしてくれた。彼に抱きしめられて、彼だけにドキドキすることがわかり、彼への想いをより強く感じた。

「あゆみ、ごめん、嫌な思いさせたな、でも皆素晴らしい奥様ですねって褒めていたよ」

私はなんて答えて良いか言葉が見つからず唯々大きく横に首を振り、彼を見つめた。

「俺、ずっとあゆみのこと守って行くから、俺の側にいてくれ」

私は彼の言葉が嬉しくて、このまま彼を信じて着いていきたいと思う反面、契約結婚から始まった関係に、彼が本気になったなんてどうしても信じられなかった、二十五歳の彼が、もうすぐ四十歳を迎える私に・・・

私は次の瞬間思いもよらぬことを口にしていた、あえて今まで触れなかった事を・・・

「麻生さん、私、ずっと不思議に思っていました、私に対して大好きって言ってくれたり子供欲しいって言ったり、契約結婚なのにいつも優しくしてくれて、しかも今日はこんなに私を紹介して、麻生さんの奥さんが他の人になった時どうするのですか」

「俺の奥さんはあゆみでずっと変わらないよあゆみが俺から離れても、何度でも連れ戻す、地の果てまで追いかけるよ」

「私達契約結婚ですよね、なんでそんなに優しくしてくれるのですか」

「あゆみを好きだからだよ」

「いつからですか」

彼は困った表情を見せて、言葉を探していた。

「私は麻生さんと初めて会った日に、大好きになりました。毎日毎日また会いたいって思っていました、でも麻生さんが私を好きになったタイミングっていつなのか全然分からなくて、こんな短い時間に好きになって貰える程の魅力が私にあるとは思えません、だから・・・」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る