第26話

「ごめん、契約結婚は口実だ」

「えっ?」

彼から真実が語られた。

「あゆみと初めて会った日、怪我の手当てしてもらっただろう、そしておかゆ作ってくれて、初対面の俺に優しく接してくれて、すごく心惹かれた。あゆみを抱き寄せた時、心臓の鼓動が早くなるのを感じた。一緒に暮らしたいと思った。だからあゆみのこと調べさせてもらった、男は居ないのか、独身か、仕事はなにをしているのかとか・・・実は俺、五年前に好きな彼女が居て、一緒に暮らした事がある、ホストの仕事を隠して。でもそれがばれてしまって、ホストは信じられないって彼女は俺の元を去った。だからあゆみにホストの仕事をしている事を話ししなかった。どうしたら一緒に暮らせるか、必死に考えた、十五歳も年下の俺があゆみを好きになった、一緒に暮らしたいからといきなり言っても信じて貰えないだろうって思って、家政婦として働いて貰おうって考えた」

彼は私の表情を確認しながら続けた。

「でも、俺はあゆみが好きだから、結婚したかった。だけど急に結婚申し込んでも答えて貰える訳ないし、それで契約結婚を思いついた。一緒に暮らし初めて更にあゆみに惹かれて行く自分がいた。日に日にあゆみへの気持ちが大きくなり、抱きたいって思った、他の男に取られたくなかった。あゆみが居ないと、出て行ったのかと心配になる、だから早く子供欲しかった、何も言わずに出て行くことは出来ないだろう?五年前の彼女は黙って出て行ったからな」

私は黙って彼の言葉に耳を傾けていた。

「もし俺があゆみを好きになったからと交際申し込んだら、承諾してくれた?」

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