第14話

今、はっきり分かっている事は、麻生さんの事大好きなのだと、もう離れたくないって事だけ分かった。

だからお客さんに嫉妬している自分がいると確信した。

彼は私の腕を引き寄せ抱きしめた。

「俺、絶対あゆみと離れないから」

彼は唇を重ねようとした。

彼と私の唇が重なる瞬間、私は顔を背けた

どうしよう、違うのに。

彼は哀しそうな表情で私に問いかけた。

「俺の事嫌いになった?」

「違います、そんな事ないです」

慌てて否定した自分がいた。

確かに嫌いになったわけではない、寧ろ大好きである気持ちが大きくなった。

彼は、私を再度引き寄せ、手で頬を撫でて唇を重ねようとした。一度顔を背けられたらすぐにキスしようと思わないと思った。

ところが彼は、躊躇せずに実行に移す。

私はこの展開をどこかで望んでいたかのように、彼の唇を受け入れた。

一瞬唇が離れて、二人は見つめ合い、また唇を重ねた。

彼は何事にも迷わない。

まるで人生に限られた時間があるかのように・・・この時彼の人生に何が起きているか想像もつかなかった。


 その日から何も変わらない日常が流れた。

彼はホストを続け、私は彼の妻として食事を作り、彼の身の回りの世話を続けた。

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