第ニ章 彼の秘密

第11話

幸せは永くは続かない、恐れていた現実に私は我が眼を疑った。

彼が若くて可愛らしい女性と一緒の所を偶然見てしまった。

まるで愛し合う恋人のように、彼女の腰に手を回し、熱い眼差しを向けていた。

彼女は彼の唇に触れて、今にもキスするようで、思わず目を反らした。

そうだよね、彼女居るよね、これが現実。

回りの声が段々と小さくなり、何も耳に入ってこなかった。

その場から早く消えたかった、現実逃避したかった。

回りが暗くなった事も分からなかった。

その瞬間、携帯が鳴り響いた。

「あゆみ、今何処?」

私は我に返った、そしてあれから永い時間が経っている事に気づいた。

「すみません、すぐ帰ります」

ショックを受けた事は確かだが、この時涙は出なかった。

彼の言葉を鵜呑みにして、信じた私がいけなかったと自分を責めた。

そう、これが当たり前の現実だから・・・

 マンションに戻ると、彼はすぐさま私を抱きしめた。

「すごく心配したぞ、何処に行っていた」

「ごめんなさい」

彼に抱きしめられて、我慢していた気持ちが溢れて涙が止まらなかった。

「どうした?何があった?」

彼は泣いている私を強く抱きしめてくれた

ずっと涙が止まらない、うそであってほしい気持ちと、現実なのだと言う諦めが入り混じって・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る