第7話

やっと理解出来た、って、えっ?無理でしょう?私と彼と結婚?いくら偽装とはいえ、まずいよ。

「あの、彼女になんて言うのですか?」

私が彼女の立場だったらと思うと、居たたまれない気持ちになった。

「彼女は居ないから大丈夫だよ」

彼は私に微笑みながら答えた。

大丈夫じゃないでしょ、これから彼女が出来たらどうするの?私は追い出されるの?心の中で彼を質問攻めにしていた。

駄目だ、ちゃんと聞かないと。

私は彼に問いかけた。

「麻生さんに、彼女が出来たら、私はどうなるのですか?」

私の言葉に畳みかけるように彼は言った。

「彼女は作らないから、心配しなくても平気だよ」

彼は私の言葉を打ち消すかのように続けた

「俺とここで一緒に暮らしてください、ずっと、大丈夫、俺を信じて」

彼の強引さに私は何も言えなくなった。

そして、彼との奇妙な関係の暮らしが始まった。


 私は今日から麻生あゆみとなった。

彼と買い物に出掛け、キッチンに必要な物を買った。

特別な事など無いが、彼とのたわいもない会話は新鮮で楽しい。

この状態を幸せって言うのかな?ずっと求めてきた私の生活。

あ~駄目だ、これは契約結婚なのだから、絶対彼女いないなんて嘘だよね、でも百歩譲って本当に彼女いないとして、なんで身の回りの世話をして貰う人が私なの?

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