第5話

彼の言葉に我に返った。

「ごめんなさい、聞いて無かったです」

彼の横顔に見惚れていたなんて言えない、

どうしていいか分からず、困っていた私に、彼は微笑んで、そして車を止めた。

「すっごいかわいい」

彼は私の頬を両手で掴み、暫くの間見つめ合った。

気が遠くなる感覚を覚えた。

それから何も覚えていない、次に気づいたのは彼のマンションだった。

「大丈夫?」

ベッドに横になっていた私に声をかけた。

「すみません、ご迷惑かけてしまって」

恥ずかしくて、この場から逃げ出したいと思った。

そんな私の気持ちを察してか、彼は自己紹介を始めた。

「俺の名前は麻生凌、二十五歳、仕事は会社経営をしている」

えっ二十五歳?若い、しかも社長?私どうしてここにいるのだっけ?戸惑っている私に彼は続けた。

「俺の身の回りの世話をしてくれる女性を探している」

あっそう言う事、やっと今の状況が分かってきた私は落ち着きを取り戻した。

「住み込みでお願いしたいのだけど」

彼は具体的な話を始めた。

住み込み?えっ、ここで一緒に暮らすって事?そうか、俺と一緒に暮らさないってそう言う意味だったのだ。

そうだよね、いきなりプロポーズなんてありえないよね。

やっぱり白馬の王子様はいないと確信した

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