第4話

彼はまるで別人のように、礼儀正しく挨拶をした。なんてかっこいいのだろう。

「どういたしまして、その後お怪我は大丈夫ですか」

ドキドキしている感情を隠すように、平常心を装った。

彼は、何もなかったかのように去って行くと思われた。

そうだよね、ドラマのような展開があるはずが無いよね。

と、次の瞬間、予想を遥かに超えた出来事が起こった。

彼は私を引き寄せて、抱きしめながら耳元で囁いた。

「俺と一緒に暮らさないか?」

私は固まったまま動く事が出来ずにいた、

初めて言われた言葉に、暫く彼の腕の中で幸せの余韻に浸っていた。

うそ~、これは夢?

「これから俺のマンションに行こう」

彼はそう言って、引っ越し業者に電話を掛けた。

私は、急な展開に着いて行けず、ただただ茫然と立ち尽くしていた。

間もなく業者がやって来て荷造りを始めた

「後は業者に任せて、飯食いに行こうぜ」

彼は私の手を取り、車のドアを開けエスコートしてくれた。

私は夢を見ているの?頬を抓ると痛かった夢じゃない。隣で運転している彼を見つめて、冷静な判断が出来ずにいる私に、彼は言葉を掛けた。

「何が好き?」

彼の言葉は耳に届いていない状況で、彼をずっと見つめていた。

運転している彼の横顔は、輝いて見えた、

ずっとこのまま時間が止まってと願った。

「俺の話聞いている?」

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