第75話

「断る」


「山城組組長は、あなたが首を縦に振らなければ、山城組追放も視野に入れているって仰ってましたわ」


圭子はとっておきの情報を、山城の耳に入れれば、絶対に考え直すと思っていた。


「それに、くるみさんが愛しているのは、我妻組若頭我妻力也よ」


山城の表情が変わった。


「あら、ご存知だったの?他の男を愛している女を、よくも抱けるわね、

あなたにはプライドと言うものがないのかしら」


山城は手に握り拳を作り、強く握った。


(今、俺がこの女に逆らえば、くるみはどうなるんだ、そうだ、くるみは我妻を愛している、俺がサインすれば、くるみを忘れれば、くるみの危険は回避されるんだ)


「わかった、サインする、圭子と結婚するよ、そして、二人で組を大きくしよう」


「本当なの」


「ここに監禁されて、目が覚めたよ、なんて俺はバカだったか、わかった」


圭子は満面の笑みを浮かべた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る