第48話

そして、荷物を持って、部屋を出ようとした。


「くるみ、待て、一緒に出よう」


「ごめんなさい、今日はホテルに泊まります」


くるみは山城に背を向けた。


「くるみ」


山城の呼びかけた声も届かず、無情にもドアはパタンと閉じた。


(くるみは一度も我妻の名前を口にしなかったな、俺への配慮か、あいつへの決別の現れか)


その頃、我妻組では大変な騒ぎだった。


「若頭、山城組管轄のキャバクラに一人で乗り込んで、ボロボロになって帰ってきたぞ、でもよく山城組が若頭を命がある状態で返してくれたな」


我妻組組員は口々に言っていた、信じられないと……


我妻は三日三晩眠り続けた。

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