第44話

「ひとみ、元気だったか」


ひとみは我妻の顔を見ないで「はい」とだけ答えた。


愛しい男性、我妻の胸に飛び込みたい気持ちが溢れ出した。


でも、それは許されないことだ。


(私はもうすでに山城さんに毎晩抱かれている、我妻さんに抱いてもらえる女ではない、それに借金を我妻さんに払ってもらうことだけは出来ないよ)


「ひとみ、俺と一緒に帰ろう」


我妻はひとみの手を引き寄せ、席を立った。


出口に向かって、ひとみを連れ出そうとした。


しかし、山城組組員に取り囲まれた。


我妻の抵抗も虚しくボコボコにされた。


「もう、やめてください」


ひとみは我妻の身体に覆い被さった。

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