第4話

「しばらく、走らせろ」


「へい、かしこまりました」


「てめえ、何度言わせるんだ、「へい」じゃなくて「はい」だろ」


「すんません」


(まったくヒヤヒヤさせやがる、そうだ、自己紹介)


「あのう、自己紹介まだでしたよね、俺は我妻力也、我妻コーポレーション社長です」


俺はスーツの胸ポケットから名刺を出し、彼女に渡した。


彼女は俺の差し出した名刺をマジマジと見つめていた。


「ご丁寧にありがとうございます、私は榊ひとみと申します、今はコンビニでアルバイトをしています」


私は榊ひとみ、三十九歳、昼間はコンビニでアルバイトをしている、ここまでは嘘はない。


実は夜も働いている。

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