第34話

葉月は恥ずかしそうに俯きながら頷いた。


こんな些細な幸せがずっと続くと思っていた。


冨樫は車でマンションへ向かった。


葉月は支度をしてコンビニに急いだ。


「すみません、長い期間お休み頂いちゃって……」


「大丈夫だよ、葉月ちゃんはよく働いてくれるから助かるよ、またよろしく頼むな」


店長にそう言われて恥ずかしそうに頷いた。


バタバタと午前中の業務が終了した。


午後になって、一組の男女が店に入ってきた。


葉月の名札を確認すると、女が声をかけてきた。


その女は葉月にとって忘れもしない、冨樫に馴れ馴れしくしていた女だった。


「日向葉月さんね、私は冨樫雅也の婚約者、本山麗美です」


冨樫さんの婚約者?


葉月は驚きの表情を隠せなかった。


「いま、すぐにこの店を辞めて、引っ越ししてちょうだい、雅也さんの周りをうろつかれると目障りなのよ」


葉月はどうしていいかわからず、黙っていた。


すると、後ろに控えていたチンピラ風の男達が、店の商品を棚から落とした。


「あ、手が滑っちゃったな」

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