第30話

そこへ葉月が戻ってきた。


「あ、日向さん、よかった、こちらの冨樫さんが日向さんが熱出して仕事を

休んでいるのに、インターホンに応答がないから、部屋で倒れているんじゃないかと心配して、今、鍵を開けてあげるところだったんだよ」


「すみません」


「冨樫さん、良かったねえ、では私はこれで」


大家さんはその場を後にした。


「冨樫さん、その袋、今まで届けてくれたのは冨樫さんだったんですね」


「あ、その、なんだ、風邪引いたって聞いたから」


「ありがとうございます」


葉月はにっこり微笑んだ。


「もう、大丈夫なのか」


「はい、冨樫さんのおかげです」


冨樫はどうしていいか分からず、戸惑っていた。


葉月は部屋の鍵を開けた。


「あのう、コーヒー飲んで行きますか」


葉月は冨樫を誘った。


「いいのか」


「どうぞ」


冨樫は葉月の部屋に入った。

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