第26話

当然のように、冨樫に抱きついてきた。


すぐ後ろには本山組若頭、城之内理玖が控えていた。


冨樫は麗美の腕を振り払った。


「こんなところで馴れ馴れしくするな」


「雅也さんったら、照れちゃって、可愛い」


そんな様子を嫌な思いをしながら見ていたのは葉月だった。


私は冨樫さんともう、関係ないのに、やだ、ヤキモチ妬いてるの?


葉月の胸の中はモヤモヤしていた。


仕事に集中しなくちゃ、そう思いながらもチラチラ冨樫と麗美を見てしまう。


しばらくすると、麗美は店から出ていった。


冨樫はやれやれとおもいながら、一冊の雑誌を手に取り、レジに向かった。


いつもの通り葉月に声をかける。


「今日は雨が降りそうだが、傘は持ってきたか」


「私のことは放っておいてください」


冨樫は思いもよらない葉月の言葉に戸惑いを露わにした。


「何か怒ってるのか」


「別に怒っていません」


明らかに不機嫌な態度を感じた。

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