第18話

それとも、他に好きな人がいるの?


葉月はヤスシに聞いてみた。


「ヤスシさん、冨樫さんには恋人はいらっしゃらないんですか」


「若頭は三年前には結婚を約束した人がいたんですが、その女性はもうこの世にはいないんです」


「ご病気か何かでなくなったんですか」


「いえ、自殺です」


葉月は思わず口を手で覆った。


「どうして自殺なんて……」


「その女性には好きな男がいて、後追い自殺です、若頭は騙された感じで、

相当のショックを受けました、若頭も自殺しちまうんじゃないかと心配して、

組長が俺に若頭を見張れって」


「そうだったんですか」


「でも、葉月さんが一緒に暮らすようになって、若頭、元気になりました、

葉月さんを大事に思っているんですね」


「そんなことありません」


「だって、もちろん男と女の関係ですよね」


「あの、違うんです」


「えっ」


「私が拒否してから、おでこにキスして、ギュッと抱きしめてくれて、そのまま朝まで何もないんです」

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