第17話

「俺、いきなり約束破ってるな」


そんな二人を見てヤスシは咳払いをした。


「ちょっと、二人の世界に入らないでくださいよ、俺がいること忘れないでください」


葉月は恥ずかしくなって俯いた。


冨樫は葉月に対して、好きだという感情が溢れていた。


「葉月、お前がここにいてもいいと思うなら、俺がお前を守る」


「冨樫さん」


二人はじっと見つめあった。


「はい、朝食出来ましたよ」


二人はヤスシの言葉に現実に引き戻された。


それから、葉月は冨樫のマンションで暮らすことになった。


夜はベッドを共にする。


しかし、冨樫はあれ以来、葉月を抱こうとはしない。


おでこにキスを落とし「おやすみ」と言って抱きしめて眠る。


こんなに大事にされた経験は、葉月の中でははじめてのことだった。


少しづつ、アザもキスマークも消えて、葉月は脱衣所の鏡の布を外した。


自分の姿を鏡に映すと、走馬灯のように嫌な記憶が蘇るからだ。


あの時、私が拒否したから、冨樫さんのプライドを傷つけてしまったの?

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