第十八章 健吾さん、愛しています

第139話

「あのう、西園寺さんはどちらにいるのでしょうか」


亮二は自分の記憶がない美希に怒りを覚えた。


「僕のことは記憶にないのか」


「えっ」


「君は僕の妻だ、五年間ずっと生活してきた」


由梨は混乱していた。


(この人は何を言っているの?)


「君は雑誌を見て、違う世界の西園寺健吾に会いたいと言い出したんだ、彼は極道だ、彼にも愛する妻がいる、迷惑だから迎えにきてほしいと頼まれたんだ」


(迷惑)


「迷惑かけるわけに行かないだろう、帰ろう」


由梨は納得してないようだが、それから健吾のことは口にしなくなった。


その頃、ハンバーガーを買いに出た裕也は、姿が見えない由梨を必死に探していた。


(やべえ、どこに行っちゃったんだよ)


裕也は健吾に連絡した。


「組長、すみません、自分がハンバーガーを買いに行った隙に、由梨さんが消えちまったんです」


「わかった、俺もそっちに戻る」


健吾は亮二が連れ戻しにきたのだと推測した。

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