第138話

「由梨さん、大丈夫ですか、西園寺組長の舎弟の裕也です」


由梨はそっとドアを開けた。


「よかった、組長、心配してましたよ、声をかけたのに返事がないって」


「西園寺さんは、何で機嫌が悪かったんですか」


「由梨さんにどう対応したらいいかわからないんですよ」


「私、西園寺さんを困らせているんですか」


裕也は五年前のことを思い出していた。


(このままでは、また、由梨さんは組長の前から姿を消しちまう)


「由梨さん、安心してください、何も困らせてることなんてありません」


(私が西園寺さんに会いたいって思っちゃ迷惑なの?)


「俺、ハンバーガーでも買ってきます、待っててください」


由梨が一人になった時を狙い、亮二はインターホンを鳴らした。


「どちら様ですか」


「西園寺さんに頼まれて、お迎えに来ました」


(西園寺さん?)


由梨はオートロックを解錠してしまった。


「さあ、いきましょうか」


由梨は疑いもせず、亮二の車に乗り込んだ。

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