第133話

そして顔を洗い、キッチンの椅子に座った。


由梨は何も言わずに困った顔を見せた。


「どうかしたか」


「あのう、雑誌」


「雑誌?」


健吾は由梨が持っていた自分の特集が組まれている雑誌のことだと思った。


「これか」


健吾は雑誌を由梨に渡した。


「はい」


由梨は嬉しそうに雑誌を抱きしめた。


「あのう、西園寺健吾さんですよね」


「ああ、そうだ」


「これ、拝見して、会いたいなあってずっと思ってたんです」


「そうか」


「どこかで会ったことあるように思うんですが、私と会ったことありますか」


(昨夜の記憶はすっかりないんだな、俺を訪ねてきた時に戻ってるってことか、でも俺に会いたいって思いは消えていないってことか)


「あのう、私、なんで西園寺さんの家に寝ていたんですか」


健吾はどう答えるべきか迷っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る