第127話

でも、嫌じゃなかった。


健吾は由梨を連れて、マンションに向かった。


ベッドに身体が沈み、健吾は由梨の首筋に唇を這わした。


健吾は由梨をじっと見つめた。


「由梨、俺が嫌なら拒絶してくれ、お前は五年間、あいつと共に生きてきたんだ、

俺も組のためにほかの女を抱いた、でも、満足出来なかった、由梨を愛している、

確かにお前は俺の妻だった、でもあいつが言うように、俺と由梨の間には、

今は何もない、今この場で由梨を抱いたら、俺はほかの男の女を奪う形になってしまう」


「健吾さん、私、健吾さんに触れられるの嫌じゃありませんよ」


「でも、由梨はあいつを愛しているんだろう」


「あいつって誰ですか」


健吾は由梨の記憶にあいつがいないんだと気づいた。


でも、五年も一緒にいて、何もないわけがない。


由梨はあいつの記憶がないだけだ。


その時、由梨が言葉を発した。


「私は健吾さんと一緒にいたいです」


「由梨、本当か」


「はい」


そこに亮二がやってきた。


健吾はオートロックを解錠した。

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