第111話

(俺は誰にも由梨のことは頼んでいない、いや、忙しすぎて由梨が頭から消えていた)


「裕也、もっとスピード出せ」


「無理言わないでください」


健吾がマンションに着くと、部屋は真っ暗で、由梨の姿はなかった。


「由梨、由梨」


すぐにスマホを鳴らしたが、電源が入ってはいなかった。


(まさか)


山本は健吾が組長に就任したことから、すっかりおとなしくなり、由梨が拉致されたとは考えにくかった。


由梨の荷物はおいてあった。


(ふらっと出て、帰り道がわからなくなったのか)


健吾は必死に探し回った。


しかし、由梨の行方は分からなかった。


(由梨、どこで何をしているんだ)


その頃、由梨はアメリカにいた。


ふらっとマンションを出て、道に倒れていたのを助けてくれたのが、道重亮二だった。


道重コーポレーション社長、四十歳なのに、独身でバリバリと仕事をこなしている。


由梨は、亮二のマンションで目を覚ました。


「大丈夫?」

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