第十三章 由梨の中に存在する健吾

第100話

その時、由梨の口が動いた。


「健吾さん」


由梨はにっこり微笑んだ。


「由梨」


健吾は我が耳を疑った。


(健吾さんって言ったよな)


その時、山本は由梨を引き寄せ、ナイフを頬に当てた。


「由梨に触れるんじゃねえ」


山本はナイフを捨て、由梨の顔に唇を近づけた。


「なんて柔らかい頬なんだ、舐めさせてくれ」


由梨は顔を背けた。


その時、信じられないことが起きた。


渡辺の肩を借りてやっとの思いで身体を引きずっている状態だった健吾が、


スライディングをして、山本を蹴り、押さえつけた。


山本が捨てたナイフを山本の喉にあてがった。


「動くんじゃねえ、一歩でも動いたら組長の命はねえぞ」


放り出された由梨は動けずにいた。


健吾の言葉に山本組組員は固まった。

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