第101話

「渡辺、由梨を連れて先に帰れ」


「しかし……」


「俺の命令が聞けねえのか」


「承知致しました」


渡辺は由梨と裕也を連れて、その場をあとにした。


由梨は後ろ髪を引かれる思いで健吾を見ていた。


建物を出ると、停車してあった車に乗り込み、西園寺組事務所へ車を走らせた。


事務所へ着くと、「若頭はどうしたんですか」と組員が口々に言った。


渡辺は健吾の考えが分からず、途方にくれた。


健吾は、気づくとベッドに身体を横たえていた。


身体中が悲鳴を上げていた。


そこへ、健吾の顔を覗き込んだ男がいた。


「西園寺組若頭、どうしてくれるんですか」


その男は山本組若頭一真だった。


「読み通りだったな、お前は俺を助けると……」


「山本組に戻れませんよ」


「俺のところにこい」


あの時、渡辺が由梨と裕也を連れ出したあと、健吾は力尽きてぶっ倒れた。

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