第99話

山本は健吾を睨んだ。


「お前は隣にいる奴を警戒した方がいい」


山本は一真を見た。


「そいつは将来トップに立てる器だ、俺は実際に腕を交えなくてもわかる、

強いだろ、頭も切れる」


「飼い犬に何が出来るんだ」


「飼い犬に噛まれないことだな」


一真は健吾はなんでもお見通しなんだと尊敬の念を抱いた。


「もう、おしゃべりは終わりだ」


山本は由梨を連れてくるように指示した。


ロープで拘束されてる由梨の姿に、山本に対して怒りを露わにした。


「由梨、大丈夫か」


由梨はキョトンとしていた。


そして、言葉を発した。


「怪我されているんですよね、大丈夫ですか」


「俺は大丈夫だ」


「早く病院へ行ったほうがいいと思います」


「そうだな、一緒に帰ろう」


一度も自分の名前を言ってくれない由梨に、自分の記憶は既にないのだと諦めかけた。

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