第96話

「由梨、健吾だ、大丈夫か、怪我はしてないか、何もさせていないか」


「健吾さん、早く迎えにきてください」


「ああ、すぐ行く、もう少し待ってろ」


由梨は一真にスマホを返した。


「もしもし」


「今から向かう、由梨に手を出したらただじゃおかねえ」


「おい、一つ聞いてもいいか?」


健吾は何を聞かれるのか不思議だった。


「俺が調べさせてもらったところ、西園寺組の姐さんのはずなんだが、

自分は姐さんじゃないって言い張るんだ、どうなってるんだ」


「話せば長くなる、由梨と俺は確かに夫婦だ、とにかくすぐに迎えに行く」


健吾はスマホを切った。


そして、渡辺に頭を下げた。


「俺を由梨のところに行かせてくれ」


「若頭、それが何を意味するのかおわかりですか」


「わかってる、でも、由梨を見捨てるわけにはいかない」


「自分達も姐さんを見捨てるとは言ってないです、自分が迎えに行きます」


「頼む、俺を連れて行ってくれ」


健吾は深々と頭を下げた。

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