第95話

渡辺は、健吾を引き止めるのに必死だ。


「若頭、組員総出で姐さんと裕也の行方を探しています、若頭は大人しくしていてください」


「大人しくなんかしてられるか」


健吾は立ち上がると、床に倒れた。


(くそっ、俺は由梨のために何も出来ないのか)


そこへ健吾のスマホが鳴った。


「いきなり、失礼します、山本組若頭東條一真と申します、西園寺組若頭、西園寺健吾様のスマホで間違いないでしょうか」


「ああ、なんの用だ」


「姐さんをお預かりしております」


「何?」


「おい、無事なんだろうな、声を聞かせろ」


一真はスマホを由梨に渡した。


「あんたの旦那だ、声聞かせてやりな」


「私には旦那様はいません」


「いいから出ろよ」


由梨は恐る恐るスマホに出た。


「由梨です、誰ですか」


健吾は大きく深呼吸をして答えた。

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