第89話

「健吾さん、それじゃあ、私が病人みたいですよ」


「そうだな、俺、早く退院するからな、お前が心配で堪らねえ」


由梨は恥ずかしそうに俯いた。


「そういえば、私が毎日お見舞いに来て、健吾さんの奥様は大丈夫ですか」


「えっ?」


「奥様、ヤキモチ妬いてないですか、怒ってるんじゃないですか」


(俺と婚姻届出したことも覚えていないのか)


「由梨は俺の奥さんだよ」


由梨は目をパチクリして驚いた表情を見せた。


「そうなんですか」


このことも、次の日同じ会話を交わした。


健吾はだいぶ回復に向かっていた。


いつものように由梨が病室にくると、ベッドに座っている健吾の姿にびっくりした様子を見せた。


「健吾さん」


「ベッドに起き上がれるようになったんだ」


「よかったですね」


健吾は由梨を手招きした。


「何ですか」

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