第88話

由梨は健吾の病院へ行く時、マンションへ戻る時、必ず裕也が車で送り迎えをしてくれる。


「あのう、私なら大丈夫ですから、いつもいつも申し訳ないので……」


「いいえ、姐さんは西園寺組若頭西園寺健吾の大切な人ですから、俺の命に変えてもお守りします」


由梨は恥ずかしくなった。


いつものように由梨が病室に向かうと、健吾は昨日頼んだ本を持っていないことに気づく。


(やっぱり、忘れてるな、いや、頼まれたことも覚えていないだろう)


「由梨、変わりないか」

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