第66話

「由梨さんが忘れたみたいなんです」


健吾は差し出されたカードキーを受け取った。


「実は何回かあって、今までは由梨さんに渡していたんですが、こうも続くと

ちょっと……それで西園寺さんにお伝えしておこうと思って」


「お気遣い頂きありがとうございます」


健吾は丁寧に頭を下げた。


このマンションは西園寺組組長がオーナーで、つまり、健吾の父親だ。


コンシェルジュは古くからの父親の知り合いだった。


色々なことで世話になっている。


由梨のこともちゃんと紹介しておいた。


将来の伴侶だと……


健吾はまさかと思ったが、思い当たる節はたくさんある。


(一度、病院へ連れて行くか)


健吾は由梨を連れて病院へ向かった。


「健吾さん、どこか具合でも悪いんですか」


「ああ、俺じゃなく、由梨」


「私ですか」


由梨は、一年前の病気のことだと思った。


(でも、なんで健吾さんは知ってるんだろう)

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