第九章 健吾の決意

第65話

由梨は一人になると、寂しさに押しつぶされそうになる。


いつもは元々一人だから、感じなかった寂しさ。


健吾と暮らすようになって、こんなにも誰かがそばにいることが嬉しいなんて。


(誰かじゃない、健吾さんが一緒なのが嬉しい)


そんなある日、由梨は買い物に出かけた。


色々な食材を買って冷蔵庫に入れる。


何回か繰り返すうちに気づいた。


(大根、なんで三本もあるの?)


(牛乳、また買っちゃった)


そんな由梨の様子に健吾も気づき始めた。


「由梨、トイレットペーパーたくさんあるのに、また買ったのか」


「えっ?」


「まっ、いいか」


そんなある日、健吾はマンションのコンシェルジュに呼び止められた。


「西園寺さん」


「いつもお世話になっています」


「あのう、これ」


コンシェルジュが差し出したのはカードキーだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る