第64話

「大人しく留守番してろ、ほかの男にうつつを抜かすんじゃねえぞ」


「そんなことしません」


「お前がそう思わなくても、ほかの男が放っておかないだろ」


由梨は目をパチクリした。


「なんて顔してるんだ」


「だって健吾さん、ありえないこと言うんですもの」


「お前は自覚がなさすぎる、いい女だぞ」


由梨は面と向かっていい女なんて言われたから、恥ずかしくて顔が真っ赤になった。


健吾はそんな由梨の腕を引き寄せ、キスをした。


「さっきまでお前を抱いていたのに、また抱きたくなった」


「ダメですよ、裕也さんが首を長くして待ってますよ」


「しょうがねえな、行ってくる」


健吾はドアの向こうに消えた。

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