第63話
一年前、体調を崩し、入院を余儀なくされた。
由梨は休みなく働き詰めだった。
(神様が身体を休めなさいって、言ってくれてるのかな)
その時は東條ホールディングスに勤めていたから有給を使って身体を休めることにした。
自覚はなかった。
なんとなく怠くて、疲れやすいなっと感じる程度だった。
貧血も時々あった。
この時、看護師さんの立ち話を耳にしなければ、自分が命に関わる病気などと思いもしなかっただろう。
「ねえ、昨日入院した患者さん、もう手遅れらしいよ、まだ若いのにねえ」
「そうなんだ、確か珍しい苗字だったよね、なんとか凪だっけ」
由梨は自分のことを話していると確信した。
(私、死んじゃうの?)
でも、人生になんの夢も、希望も持っていなかった由梨は、この借金地獄から抜け出せるなら助かると思っていた。
一週間ほど入院して、先生からも無理はしないようにとの注意があっただけで、退院した。
あれから一年、体調の変化もなかった。
でも、身体は徐々に蝕まれているんだろうと思っていた。
「いってらっしゃい」
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