第43話

「えっ、由梨、お前、はじめてか」


「はい」


由梨は健吾を見つめた。


健吾は固まっていた。


(何?はじめては嫌なの?)


健吾の表情からは気持ちが読み取れない。


健吾は視線を外して、考え込んでいた。


(好きでもない男がはじめてってやべえだろ、しかも極道だぞ、由梨は堅気なんだ)


(これじゃあ、犯してるも同然だ)


「健吾さん?」


「シャワー浴びてくる、着替えて飯食いに行こう」


健吾はシャワールームに向かった。


由梨は健吾の背中に向かって叫んだ。


「はじめてじゃあ、健吾さんのセックスの相手は出来ないんですか」


健吾は黙ったままシャワールームに消えた。


(役不足ってこと?)


この時、お互いの気持ちを読み取ることが出来ずにいた。


ベッドにぽつんと取り残された由梨は、身体の火照りをどうしていいのかわからずにいた。

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