第36話
「何をするんですか」
「君にはスマホは必要ない、僕だけを見ているんだ、いいね」
由梨は粉々になったスマホを見つめていた。
(これでもう、西園寺さんと会うすべは立たれた)
「さあ、仕事に戻れ、就業時刻になったら、表に車を停めておく」
「わかりました」
由梨は仕事に戻った。
それから、全く仕事に身が入らなかった。
(西園寺さんに、このことを伝えなくちゃ)
その頃、健吾は由梨のアパートに向かっていた。
由梨の部屋から荷物が運び出されているところだった。
「おい、どう言うことだ、聞いてこい」
「へい」
裕也は引っ越し業者を問いただすと、東條ホールディングス社長、東條優馬宅へ引っ越しだと聞きだした。
「若頭、由梨さんは東條優馬のマンションに引っ越しだと言うことです」
「なんだって」
健吾は渡辺に早速連絡を入れた。
「渡辺、由梨が東條のマンションへ引っ越しと業者からの情報だが、由梨から何か聞いているか」
「いえ、何も連絡はありません、すぐに確認致します」
健吾はスマホを切った。
(由梨、どう言うことだ)
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