第33話

「健気ですね」

「好きでもない俺に自分の裸見せて、嫌だったに違いねえ」


「借金のためですか」


「そうだろ?」


裕也は考え込んでいた。


「なんだよ、他に理由ねえだろ、俺は振られたんだ」


「でも、若頭が彼女の借金を肩代わりすることを断ったのに、借金の支払いのために若頭の申し出を受けますかね」


「どう言う事だよ」


「もしかして、若頭を好きになったとか」


「だって俺は振られたんだ」


「変わりやすいのは女心と秋の空ですよ」


健吾は由梨のキスを思い返していた。


「帰りがけ、キスしてきたんだ」


「やっぱり間違いないですよ」


「でも、俺が抱かなかったから、役割のつもりじゃないのか」


「彼女の気持ちは彼女にしかわかんないっすね」


健吾は自分の唇を指で触れた。


由梨のキスの感触がまだ残っていたのだった。


(由梨、どうしたら俺を好きになってくれるんだ)

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