第30話

由梨が躊躇していると、健吾は怒鳴りつけた。


「もたもたしてねえで、さっさと裸になれ」


由梨はこれが現実なんだと悟った。


今までの健吾は由梨を愛してくれていた。


だから、優しい愛情溢れる言葉や態度だった。


でも由梨が酷い言葉を浴びせた時から、健吾と由梨の関係は極道とその女。


(ただ、西園寺さんの欲求を満たすためだけの存在なんだ)


由梨は覚悟を決めて、服を脱ぎ始めた。


一糸纏わぬ姿になった由梨をじっと見つめる健吾。


(由梨、すごく綺麗だ、お前が欲しい、俺は由梨と結婚したい、でも振られちまった、


借金だって肩代わりしたいのに断られた、でもお前を誰にも渡したくない、だから


お前を囲うと言う方法で、金を渡し、お前を独占する、でもお前は自分の立場をわきまえて、


手当て分のことをしようとしてくれてる、俺は無理してるお前は抱けねえよ)


健吾は由梨に近づき、自分の上着を羽織らせて、抱きしめた。


「服を着ろ、腹が減ったんだ、飯食わせろ」


健吾が由梨に背中を向けた。


由梨は健吾の背中に抱きついた。


「なんで抱いて頂けないのでしょう、もしかして契約は打ち切りですか、

私は魅力がないのでしょうか、二ヶ月分の手当てを頂いているのに、

何もしないなんて、心苦しいです」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る