第21話

「ではすぐにそちらに向かいます、GPSを追いますのでそのままスマホは切らないでください」


「俺のスマホは逃げる途中で落としたんだ」

「ではこれはどなたのスマホですか」


答えようとした時、悲鳴を上げた。


「痛え」


女は自分のスカートを破って、俺の血がドクドク出ている部分に縛り付けた。


「止血しないと死んじゃいますよ」


スマホからは渡辺の叫ぶ声が聞こえていた。


女はスマホを握って、答えた。


「ここは新宿三丁目の雑居ビルの裏通りです、脇腹から血が出ていてかなり重症です、今止血しましたが、救急車呼んだ方がよろしいんではないでしょうか」


「よろしくお願いします」


俺は意識が朦朧としてきた。


目がかすみ、身体に力が入らない。


口が乾いて水が欲しかった。


「水をくれ」


その女はバッグからペットボトルの水を取り出すと、俺に飲ませてくれた。


でもなかなか喉を通っていかない。


その女は自分の口に水を含み、俺に口移しで飲ませてくれた。

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